その9・霞ヶ浦の水質汚濁


 

 

 

 

 

浄化政策は

決まるが・・・

〜霞ケ浦・水質汚濁の改善策とその成果〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浄化政策は決まるが…」

 

目次


目次 *

1.霞ケ浦の水質汚濁 *

2.湖沼水質保全計画 *

3.霞ケ浦は・・・ *

4.なぜ改善しない *

5.官僚はなにを *

6.注釈・用語 *

7.参考文献等 *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.霞ケ浦の水質汚濁

 

日本で第二位の167.6平方qもの面積を持つ霞ケ浦。近年、都市化が顕著に進む茨城県南部に位置し大小56の河川が流入する。最大水深は7m、平均水深も4mと非常に浅い湖である。流域は茨城県の県央、鹿行、県南、県西地方の42市町村、それに千葉県佐原市、小見川町の一部、栃木県益子町の一部が流域となり、その流域面積は実に2157平方qあり、これは茨城県の約1/3の地域に相当する。かつては海水も流れ込み汽水湖でもあった霞ケ浦は、塩害防止と治水、そして鹿島工業地域への工業用水としての使命を果たすべく淡水化計画が進み、昭和38年常陸利根川逆水門が建設・完成されると、霞ケ浦の水質は富栄養化により一気に水質汚濁の方向へと突き進んだ。さらに高度経済成長の昭和40年代半ば以降、流域人口の増加や社会経済活動の進展に伴いさらに水質汚濁が進行している。茨城県内では、この霞ケ浦だけでなく涸沼や牛久沼などの湖沼でも同様に水質汚濁が進行している。

霞ケ浦を浄化し、環境保全や水質をよくする為に昭和57年「茨城県霞ケ浦の富栄養化の防止に関する条例」を施行し、同時に「富栄養化防止基本計画」を策定して、工場・事業所の窒素・りんの排出規制、りんを含む家庭用合成洗剤の使用等の禁止、農業・畜産業・魚類養殖業および生活排水に係る各指導要綱により、窒素・りんの流入削減に努めてきた。

さらに昭和60年には「湖沼水質保全特別措置法」に基づき霞ケ浦が指定湖沼として指定され、昭和61年には富栄養化防止のための施策の目標として窒素・りんに係る水質環境基準の類型指定がなされた。昭和62年には「湖沼水質保全計画」(1)を、平成4年には第2期の計画を策定し下水道整備等の水質保全対策や工場等各種汚濁源に対する規制等の措置を総合的、計画的に推進してきたが、まだまだ水質が改善されたという状況にはいない。

今後は、第3期の「湖沼水質保全計画」および第2期の「霞ケ浦富栄養化防止基本計画」と「霞ケ浦水源地整備計画」を有機的に機能させて、各種の浄化施策を推進し霞ケ浦とその流域河川の水質汚濁を一掃しようとしているので、これからも少しずつではあろうが水がきれいになっていくだろうと思われる。

 

 

 

 

2.湖沼水質保全計画

 

 

昭和62年「湖沼水質保全計画」の第1期が策定され、その後期間の終了に伴い第2期が策定された。第2期の終了した平成7年度末までに、どれだけ達成できたのであろうか。

平成7年度のCOD(1)75%値は9.8ppmであった。環境基準(2)では3ppmとされているのに対してもかなり高いことが分かる。湖沼水質保全計画の第2期では霞ケ浦のCOD値は基準となる平成2年度の9.4ppmから平成7年度には8.1ppmに減らすこととされているが、実際には9.8ppmであったことから、減らすどこかかえって増加してしまっている。全窒素の年平均値は平成7年度1.0ppmであった。環境基準では0.4ppmとされ、湖沼水質保全計画では平成2年度の1.3ppmから平成7年度には0.99ppmにまで減らすこととされている。全窒素のほうは何とか計画値に近づくところまで減少したが、それでもまだ環境基準の0.4ppmには到底及ばない。

湖沼水質保全計画第2期の主な施策の概要としては、下水道の整備をし平成2年の普及率28%48%にまで引き上げることや、農業集落排水施設を132集落、合併処理浄化槽を3123基設置すること、そして浄化用水の導入の促進、しゅんせつなどとなっているが、実際にすべて達成されたわけではないと言われている。たとえば下水道の整備についてであるが、平成7年度末までに土浦市等23市町村で事業を実施し、処理人口398300人、普及率42%となっている。計画の48%には残念ながら届いていないが、かなりの増加である。農業集落排水施設については、平成7年度末に22地区73集落で共用が開始されており、処理人口は26300人である。同時に22地区96集落では工事を継続して行っている。合併処理浄化槽については平成7年度末までに3804基、30200人の整備が完了し、計画の3123基を大きく上回る設置状況となっている。このような結果から湖沼水質保全計画の第3期は、さらに発展したものとなるような計画が必要とされている。

 

 

3.霞ケ浦は・・・

 

 

参考文献の「よみがえる霞ケ浦」のなかで「一昔前の農業排水路は水草や雑草が生い茂る小川であったが、最近は水田の土地改良がほぼ完了し、農村の労働力が不足することもあって、管理のしやすいコンクリートで作られたものとなっている。そのため小川に生息している微生物やそこに生い茂る植物が、水田などから排出される窒素や燐を結構浄化をしていたが、現在ではストレートに川を通って、降った雨がすぐに霞ケ浦に流入するようになってきているようである」(P26)と作者・冨山さんは言っている。河川の整備も、あちこちで計画されている。その結果コンクリートの川となり、どこも変わらない同じような川となってしまった。そんな河川は浄化作用もなくただ流れるだけで、いざ大雨が降ると、意外に弱くてすぐにあふれてしまう。自然のままならば、どこか都合の良いところを見つけてあふれてくれるのであるが、堤防などの工事をしてしまってどこも同じ。結局どうしようもない。

今の霞ケ浦へ流れ込む河川の水は、そのまま霞ケ浦に流れ込んでしまい、そして水門のおかげで外()へ出ることも出来ない。これこそ官僚制組織と同じである。官僚制組織は、深く考えずにとりあえず思ったことでもそのまま流れに任せ、決まったらそれが最終決定。変わることも無い。霞ケ浦の水も変わることが無い。他の意見を求め、外へ出ようとしても出ることも出来ないのである。

 

4.なぜ改善しない

 

 

「霞ケ浦はかつてきれいで泳ぐことさえできた」昔の人はそういう。当時の人が今の霞ケ浦を見たら、どう思うだろう。今から30年以上前の茨城県や日本政府には現在の水質汚濁の進んだ霞ケ浦の姿は予想もしなかったはずである。しかし、治水や農業・工業の発展の為といってとりあえずそのことだけ解決しようとした。だから常陸利根川に逆水門を建設した。それによって塩害や洪水はなくなり農業も安心して行えるようになった。また、淡水化されたので農業用水や工業用水として使えるようになった。これは沿岸住民にとってきっとよいことなはずである。だが、霞ケ浦に流れ込む川の流域住民にはあまり関係のないことである。だから意識が違うのかもしれない。

霞ケ浦に流れ込む川の流域住民はまだ下水道設備の整っていないころ、汚水を遠慮無く垂れ流していた。霞ケ浦沿岸の住民も水質汚濁に気づくまでは同じようにそのまま垂れ流していた。しかし、沿岸の住民は霞ケ浦の水質汚濁が進むと不快感を感じ、自分たちの流す生活廃水が原因であることを知る。そうすると住民は市町村や県・国などに下水道等の建設を促進するが、一向に工事が進まず普及率も上がりづらくなる。参考文献の「よみがえる霞ケ浦」で冨山さんは「生の汚い水は流さないということが、霞ケ浦の水質浄化の原点であるということを認識し、それを実行しなければならない」(P34)といっているが、まさにその通りである。だが、実際には下水道などの公共設備はすぐに整備されず、計画だけが先行している。官僚はそういった計画を決めるだけである。

水質汚濁の原因には、生活排水よりもむしろ工業排水のほうが大きい割合かもしれない。工場・事業所の排水検査を平成8年度に実施しているが、20%の工場・事業所において排水基準不適合が認められた。こういった事から、一般家庭よりも多額の費用をしかも個人団体で投資しなければいけない工業排水が多く霞ケ浦に流入する結果となっているのである。工場・事業所で工業排水に関しての投資は、利益には直接結びつかないものだからである。こういった事に官僚方はお金をかけるなりしていただくべきであろう。

 

 

 

 

5.官僚はなにを

 

 

浄化政策など、計画だけはどんどん決まっていくが、いざ実行に移すとなると大変なことである。政府や茨城県などの官僚は、計画を制定するが実行することはない。実際に活動し実施するのは制定する人間ではなく、身近にいる人間(末端職員)が実施するのである。だから何年も計画を練り、研究機関の実地調査なども踏まえて策定されたその計画の値でさえ、実行する人間は達成できる範囲なのか疑わしいと思っていることもあるはずである。

政府や茨城県の官僚方は、実行する人間でも疑わしい計画を平気で打ち出すのである。その結果計画は挫折、もしくは達成できないということになるのである。結局のところ霞ケ浦でも湖沼水質保全計画を達成しているとは言い難い。最初のほうで具体的な例を出しているが、基準値から目標値へ進ませるのにどれだけ大変か、変化した数字を見るだけでは分からない。そういう事さえも官僚の方々はお分かりになっているのであろうか。

テレビなどで官僚の方々は現場へ赴いて実際に作業をしているように見えるが、あれはあくまでパフォーマンスであるようにしか見えない。少しの時間顔を出して、終わったらすぐに帰ってしまう。それっきり二度と来ない。そんな現場がいっぱいあるはずである。それくらい官僚というの組織は軽いものなのであろうか。

霞ケ浦の水質汚濁、浄化政策はいろいろ掲げられている。それを決める官僚の方々は官僚的組織の中で悠々自適に決定を下す。そのような決め方では一向に水はきれいにならないはずである。それは何よりも地域住民、工場関係者、そして実際に水質改善を行う人を中心に考えなくてはならないからである。そうすればきっと昔のような泳げる霞ケ浦が帰ってくるかもしれない。この霞ケ浦の水質汚濁を解決する水先案内人は官僚の方々である。

 

 

 

 

 

 

 

 

6.注釈・用語

 

 

 

1・・・COD(化学的酸素要求量)

水中の有機物を酸化剤で酸化するのに消費される酸素の量。有機物が多いほど酸化の為に必要な酸素量も多く、水の汚染度を示す数値となる。単位はppm1ppm1リットルの水の中に1mgの酸素が必要なことをあらわす。環境基準では湖沼、海域の汚濁指標として採用されている。湖沼で最も厳しい基準は1ppm以上。

 

 

2・・・環境基準

環境基本法に基づき「人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」を言う。政府が定める行政上の目標として、大気、水質、騒音、土壌について定めている。水質汚濁では、人の健康保護基準と生活環境保全基準がある。

 

 

その他に・・・BOD(生物化学的酸素要求量)

水中の有機物が微生物によって一定時間内に酸化分解される時に必要な酸素量。水が汚れていれば有機物も多く、酸素も多く必要。単位はppmで数値が高いほど汚濁がひどい。環境基準では河川の汚濁数値として採用されている。

7.参考文献等

 

  1. 冨山 「よみがえる霞ケ浦」 19946
  2. 霞ケ浦水質浄化対策研究会

     

  3. 山本 編集 「知恵蔵1998 19981 朝日新聞社
  4.  

  5. 茨城県企画部企画調整課 「茨城県長期総合計画」

平成712 茨城県

 

4. 茨城県環境部生活環境政策課 「環境白書平成9年度版」

平成96 茨城県

 

5. 環境庁 企画調整局 調査企画室 「環境白書(各論)平成9年版」

平成96 大蔵省印刷







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