その3・東京湾重油流出事故


東京湾タンカー原油流出事故の処理への対応

取り上げた記事:
1. 7月3日 読売:東京湾に原油15000キロリットル流出
2. 7月3日 読売(夕):流出原油量1550キロリットルに修正
3. 7月4日 読売:今日中に回収見込み/「油怖いが処理剤も」
4. 7月5日 読売:幸運重なり素早い処理/軽質原油、南風、内海

記事の概要:

7月2日、横浜市の南東約6qの東京湾で、パナマ船籍の原油タンカー「ダイヤモンド・グレース号」の船底が浅瀬の海底に接触、船底が破損して大量の原油が流れ出した事故は、東京湾という国の主要機関が集まる地理的条件と、今年1月に福井県の日本海沿岸で起きた「ナホトカ号」座礁・原油流出事故という過去の苦い教訓が生かされたのか、原油の流出・被害の拡大を防ぐため、今までにはないかなり早い対応が繰り広げられた。しかし、流失量が国内過去最大規模の15000キロリットルと当初は言われたが、その後1550キロリットルに大幅に修正されるなど、情報の正確さに問題が出る一幕もあった。
しかし今回の事故では、原油の種類が軽質原油の「ウムシャイフ」ということもあり、折からの猛暑で揮発成分の大半は事故後まもなく蒸発したと見られ、海上にはほとんど浮遊することはなかった。また事故現場が首都圏に近いこともあり、オイルフェンスや油処理剤が短時間に準備できるということも原油を処理する時間の短縮につながったと見られている。

考察:

記事1では、まだ原油流出量が15000キロリットルと記されている。この記事の時にはまだ正確な情報が整えられておらず、読者には事故の事実を伝えるにとどまっているような気がする。しかし、この時点で既に運輸省による非常災害緊急対策本部が設置され、直ちに海上保安庁によるオイルフェンス設置などが伝えられている。この点は、福井県で起きた「ナホトカ号」の事故とはかなり違う物となっている。これは政府が前回の時、色々な所からさんざん文句を言われたからなのであろうか。そうであったとしても、前回よりも進歩するなんて、国の機関にしてはすばらしいことであると思う。
しかしその後、原油流出量が1550キロリットルへと大幅に下方修正されている。さすがに対応が早すぎて、今までのシステムでは情報が混乱してしまうのであろうか。それにしても記事1にしても記事2にしても、まだ広がる一方であると伝えている。これでは地域住民はあまりに心配してしまうであろう。
記事3では、一転して拡大が止まっていると報じている。東京・千葉への漂着はなくなったとしているが、これは前日を上回る数の船を現場に投入して回収作業を実行したからである。しかし住民は油を処理するために使われた処理剤による、二次汚染への心配している。処理剤の原液の使用量は12700リットルといわれ、これを薄めて使用しているものの、油を小さく拡散するだけでは結局は海の中に小さい形で残ったり、生態系への影響が出たりするのでそれでは本当の回収作業とは言えないだろう。
今回の事故は、「ナホトカ号」の教訓だけでなく、原油が揮発性が高い・風向きが一定でフェンスを張りやすかったなど、色々な幸運が重なったこともあり、処理剤の適応使用などの課題も残るが、被害が本当に少なくてよかったのではないのであろうか。また、政府にしても自分の所に近いこともあり、色々と今までにない対応を行い、原油流出に少しでも歯止めをかけようとした。この点をあまりよい評価をしない人もいるが、僕自身は、これを非常に高く評価してもよいと思う。今後も原油流出事故だけでなく、他の種類の事件でもこのように素早い対応をしていただけることを望む。そして僕はこの事件への対応は、今までにない斬新な対応と言うことで「ほぼ成功」としてもいいように思う。






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