その2・諫早湾問題


諫早湾干拓事業の水門閉鎖による環境破壊とその配慮



取り上げた記事:

1. 5月15日 読売:諫早湾干拓・民主、見直しに力点/都議選控え浮動票対策?
2. 5月21日 読売:諫早湾排水門の開放 閣僚墾「不要」見解/環境NGO強く反発
3. 5月23日 読売:国の開発事業「環境に配慮」と自画自賛
4. 5月28日 読売:閉鎖水域の汚濁進む/環境庁、水門開放提案へ
5. 5月31日 読売:諫早湾水門、一時開放へ/調整池水質改善のため



記事の概要:
「諫早湾干拓事業」食糧増産時代の45年前に構想が浮上して以来、水資源の確保、防災と目的を変えるが、総額2350億円もの巨費を投じる国営事業は、そう簡単に変更は出来ない。4月14日に潮受け堤防で切り離された湾奥は、着実に乾燥と調整池の淡水化が進む。国が主張する干拓の必要性・効果には様々な疑問も投げかけられている。その間にも、諫早湾の環境は変化を続ける。
5月15・16日。民主党は諫早湾干拓事業の見直しを求め、橋本首相・藤本農相を訪ねた。干潟に海水を流入させるため、排水門を開放するように求めるが、7月の東京都議選をにらみ浮動票対策として環境問題に焦点を当てたいとの思惑もあるようである。民主党は、閉鎖の翌日に事業の見直しを求める声明を発表したり、鳩山・菅両代表が、それぞれ現地を視察するなど、積極的に反対の意向を示した。しかし、政治と環境問題を上手く結びつけているようにも見える。
諫早湾干拓事業について5月20日の閣僚懇談会が防災上の理由から、排水門を開放する必要はないとの考えで一致した。これに対し、事業見直しを求めている環境NGO(民間活動団体)は、「なぜ結論を急ぐのか」と反発の声を強めている。環境庁では水門が閉鎖された水域の水質悪化が進めば、水門の開放を農水省に求める考えだが、事業については「環境アセスメントの段階で事業を承認しており、その立場を変更する要因はない」との姿勢だ。
様々な種の生物の保護やその持続可能な利用を図る「生物多様性条約」に基づき我が国で実施されている「生物多様性国家戦略」の進捗状況を初めて採点した。ところが、ムツゴロウなどの干潟による生物の影響が懸念されている諫早湾干拓事業については全く触れられていない上、「生物の多様性や生態系の保全が講じられた」と”自画自賛”する有様。「実体とあまりにかけ離れている」との批判も多くある。
5月27日までの環境庁の調査により、水門によって閉めきられた水域部分の水質汚濁が進み、COD(化学的酸素要求量)が当初の2倍に達していることが分かった。今後生物の死骸や排水の流入により汚濁はさらに進むことが予想され、同庁は農水省と共に設置する「諫早湾環境保全連絡会」の中で、一時的に水門を開けることを提案する方針を固めた。
早ければ6月初めにも水門が開放される可能性が出てきた。しかし水門開放では汚濁水を海に放流するだけなので、事業そのものの見直しにつながるものではないとしている。環境庁は干拓事業の環境アセスメントの際、「調整池全体の水の流動を促進するための水門の適切な操作」を求めており、今回の検討はこの意見に沿ったものとしている。水域内に流入する下水や廃水の浄化対策は2000年をめどに完了することになっており、それまでの間は水域内の水質悪化が進むことが予想されるため、今後も水門の一時開放が必要であるとしている。
諫早湾の干拓事業をめぐる農水省と環境庁の「諫早湾干拓環境保全連絡会議」が5月30日に開かれ、閉鎖水域となり水質悪化が進んでいる調整池の水質改善のため、水門を一時開放することが合意された。浄化効果を高めるための技術検討を行ったうえで、解放の時期を決めるという。水際にアシを植え自然の生態系を利用する浄化策のほか、汚濁の原因の一つであるしゅんせつ工事現場周辺にネットを張るなどの措置も早急に実施することとなった。



考察:
あまりにも巨費を投じて行う事業にしては結果がさんざんな状況である。巨費を投じたからといって、必ずしも成功するとは言えない典型例であろう。一度決められたことはそう簡単には変えられないという概念が大きい日本の国家が珍しく割歩したということもかなり特殊的なことである。だがそれが水門の閉められた後、環境への深刻な影響が見え始めてからという、相変わらずの対応の遅さをまざまざと見せつけられたように思う。そういった現在の日本の体制の欠陥さがこれらの記事からも読みとれる。
記事1では、いつものような日本の政治のおかしさが見えてくる。民主党は積極的に干拓事業に反対の意向を示し、現地視察や首相・農相への訪問による党の方針の報告などを行うが、これは国民に「民主党の成果」としてアピールしているようにも見えてくる。さらに国民によい感触を持ってもらい、7月の都議選で少しでも票を獲得しようとの見方さえ出来る。日本の政党は、このような目的がないとこういったの問題には積極的に参加出来ないものなのだろうか?
記事2では、閣僚懇談会で排水門を開ける必要はないとしているが、それに対して環境NGOが、反発している。これは当然のことであると思う。環境の観点から見てももう既に水質の悪化が報告され始めているからである。そんな中で進むべきと反対の方向の意見が「一致」で決まってしまうなんて非常におかしいことである。この閣僚懇談会に出ていた人全てが諫早湾を見たというのであろうか?見た人はひとりもいないはずである。もしひとりでもいたのなら、それは「一致」するはず無いのである。それくらい諫早湾は水質の悪化が深刻なのである。さらに記事2では、こう報じている。「閣僚墾見解について、
諫早緊急救済本部(諫早市)の山下弘文代表は『政府代表が現地を視察し、実体を見るべきだ』と語気を荒げる。」このことからも分かるように、現地を見た上での結果ではないのである。現地を見ていない人が決めたことに環境NGOは、当然のように反対するのである。これは全て道理にかなった事であると思う。
記事3では、「生物多様性国家戦略」について書かれているが、「環境に配慮できた」なんて、本当に現実離れしたことを言っているのであろうか。諫早湾の干拓事業を手がける農水省環境対策室は、「この戦略には諫早湾干拓事業は対象に入っていない」と述べて政策に問題がないことを強調しているが、これでは何のための生物多様性国家戦略なのか分からない。全く自然や生物保護になっていないと思う。これもまた、日本のわけの分からない体制の一部である。
記事4・5では、閉鎖した水域の汚濁について報じている。汚れを浄化する際に必要な酸素量を示したCOD(化学的酸素要求量)が、閉鎖直後は3ppmだったのに7ppmへと一気に2倍以上に増加している。この検査結果からもかなりの汚濁が進んでいる事が分かる。また調査をした5カ所のうち4カ所では、CODだけでなく、富栄養化を示す全窒素、全リン共に水質基準を上回った事が報告されたそうである。このような調査結果でやっと行政は動き出す始末である。ちょっと見れば分かるのに見るのが遅すぎるのである。
記事ではさらに、「水域内に流入する下水や廃水の浄化対策は2000年をめどに完了することになっており、それまでの間は水域内の水質悪化が進むことが予想されるため、今後も水門の一時開放が必要であるとしている。」とも報じている。浄化対策が出来ていないのに閉めたということではないか。水域内に下水や排水が流れ込めば、閉鎖的な水域には当然溜まるのである。こんな事は子供でも分かる。閉じたらこうなることが分かっているのに閉じるなんて全くおかしいことである。これでは常に開けなくてはいけないのではないか。こんな環境下ではどんな生物も生きられるわけもない。「環境庁は干拓事業の環境アセスメントの際、『調整池全体の水の流動を促進するための水門の適切な操作』を求めており・・・」とも言うが、これは最初から汚濁が進むことを知っていたように感じる。それなら最初から閉めるべきではない。
諫早湾の干拓について、私個人としては反対である。それはこのような出来事、水質の汚濁が進んでいると言うことが一番の理由である。しかしそれが最初からある程度予測されたもの、そしてその対策が遅れているということも一因である。ここまで深刻になってくると、結局は常に開けるようになると思う。だが、水質の汚濁だけではなくそれに対する行政の悪さである。民主党の話にしても、干拓計画に反対というのはいいのだけれど、
やはりこれを政治のネタに使うのはいけないと思う。さらに行政の対応は阪神大震災の時にこっぴどく叩かれているはずなのに全く変化がない。少しは変わろうという精神はないのであろうか。こういったことは未来日本の何よりの問題であると思う



参考記事: 特になし。






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